| 【第17手】 |
出願に際して先行調査をすること
−敵を知り己を知れば百戦危うからず− |
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徹底した先行調査を出願前から実施することは、後の拒絶対応のみならず良い特許を取っていくためには基本的なことである。予め先行発明を知っていたならば出願明細書の書き方も変わってくるのである。例えば、課題が新規であることに自信が有れば、本発明の特有の効果は異質の効果と言うことになり、進歩性が認められる。逆に、課題が共通する場合には、効果は同質の効果と言うことになり、進歩性が認められるためには、優れた効果であって当業者が容易に予測不可能な所謂ピーク的効果が要求される。16)課題が新規な場合には、本発明の効果としては新規な効果が記載されていればそれだけで足り、出願明細書の記載は遥かに楽になる。課題とそれに対応した構成及び構成に対応した効果を記載すれば十分である。17) |
| 【第18手】 |
一部置換発明法の奨め |
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ここに紹介する一部置換発明法は、特許性を有して経済性・権利性の高い価値有る発明を効率的に行なうための発明法である。総括すれば、先行調査を行なって、調査した先行文献の中から公知発明A、公知発明Bを選択してきて、公知発明Aの構成要件aを公知発明Bの構成要件bで置換して新規な発明(本発明)Cとし、本発明が公知発明A、Bから当業者容易想到でなければ、少なくとも「良い特許」を取得できる可能性が有る。
一部置換発明法で一番重要なことは、先行調査と特許性・経済性・権利性の判断18)である。
以下、この一部置換発明法について述べることとしよう。 |
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| (1) |
先ず、基本とする公知発明Aを、先行調査によりピックアップして、公知発明群の中から選定することが第一の仕事である。 |
| (2) |
次に、どの公知発明Bの構成要件bを選定するかと言うことが問題となる。例えば、セールスポイントに合致した構成要件bを探して、公知発明Aの構成要件aと構成要件bを組み替えて本発明Cとしても良い。 |
| (3) |
最後に、本発明Cが、公知発明Aの構成要件aの一部を特徴的構成要件bで置換することが当業者想到容易か否かと言うことの判断を行い、特許性有りと言うことになれば、特許性についてのバーをクリアしたことになる。更に、経済性・権利性について判断して、本発明Cが経済性・権利性を有することを確認して置く必要がある。 |
|
|
この様な一部置換発明法は、全ての構成要件を自分自身で一から考えるより、遥かに効率的な発明をすることができる。特許の人間も身につけて置けば、出願相談を受けた場合等には十分役に立つであろう。 |
| 【第19手】 |
発売前、発表前には必ず特許を出すこと
−新規性喪失の例外の規定は当てにしないこと− |
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特許を出さないで発売は背信行為であると考えるべきである。19)プロパテントの徹底していない会社では、この様なことが平然と行われ勝ちであるので注意する必要があろう。
発表についても同様のことが言え、特許を出さないで発表はこれまた背信行為である。むしろ特許が公開になるまで発表を控えることが開発者の常識となっている位が望ましい。「良い特許」によって包装された商品こそが、市場において優位に立つのである。特許によって包装されていない商品は一種の欠陥商品であろう。 |
| 【第20手】 |
単独出願が良い場合とは?/あるいは共同出願が良い場合とは? |
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一見単独出願の場合の方が権利を一人占めにできて、共同出願の場合よりも2倍価値が有る様に見える。
しかし、これにはカラクリが有って、その権利価値が全体で同じとする前提が正しい場合はそうで有るが、二社で実施する場合の権利価値が一社で実施する場合の権利価値よりも大きい場合はそうでない。
ユーザーが新しい着想をした場合、ユーザー単独で開発して単独出願して単独特許を取得すると言うストーリーは一見素晴らしく見える。
しかし、メーカーが、ユーザーの先願発明Aを少し変形して発明Bを実施する場合、侵害とならず、ユーザーの特許は、「矛の効力」を発揮し得ない。ユーザー単独特許としての価値は著しく減ずるであろう。
一方、ユーザーがメーカーに着想を提示して、メーカーもその着想が素晴らしいと認めて共同出願をする場合は、非常に価値が高い特許へと発展する可能性がある。この場合、着想者(ユーザー)と具現化者(メーカー)の様に相互補完が旨く行く場合は、単独出願するよりも共同出願する方がメリットが大きいであろう。
それでは、単独出願する方が、良い場合とはどの様な場合であろうか?
着想が斬新で、特許調査等を行なって、特許性・経済性・権利性から評価して素晴らしいという開発発明が単独出願の対象となろう。その際、第三者を頼らず自力で開発することが基本で、自力で開発できない部分の研究等は委託すべきである。 |
| 【第21手】 |
共同出願の場合には、実施契約が要るのか?/あるいは要らないのか? |
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共同出願の場合は、私的自治の原則により契約が有れば契約に従うことになり、契約が無ければ特許法に従うことになる。企業各々の立場により、契約を締結した方が良い場合と逆に契約を締結しない方が良い場合の両方のケースが有る。前者の例として、ユーザーが、メーカーから実施料を受け取りたい場合20)も、契約を締結して置く必要があろう(特許法第73条第2項)。また、自社の関係会社に実施させたい場合も当然に契約を締結して置く必要があろう(特許法第73条第3項)。21)共同出願の相手から実施上の制限を受けたくない場合は、逆に契約が無い方が良い(特許法第73条第2項)。 |
| 【第22手】 |
自信の有るポイントを押さえること |
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「良い特許」となるか否かは、出願の際には判断が難しい場合も多い。結局は不確定な中、発明の中に自信が有るものが有るかどうかで判断できよう。自信あるポイント、すなわち“ピッカピカ”が有る出願は自信を持って積極的に特許化を進めても特許権の効力をそれなりに発揮できるのである。22) 自信あるポイントが有る発明は、先ず新規性・進歩性をクリアできよう。自信あるポイントが、先行調査をしないでも特許性を十分保証するのである。特に基礎研究の場合には、先行調査をしても有力な先行文献が発見できない場合も有ろうし、結局は自分の発明に自信の有るポイント(すなわち“ピッカピカ”)が有るか否かで将来的価値が定まる面も有ろう。 |
| 【第23手】 |
拒絶対応を予め考慮して出願明細書を作成すること
−拒絶対応の下手な者が作成した出願明細書は信用できない− |
|
拒絶理由通知の内容はその殆どが、進歩性(特許法第29条第2項)についての拒絶理由通知である。そして、その進歩性についても問題となるのは特に課題と効果の記載であり、この詳細な説明における個々の請求項の課題と効果の記載方法の巧緻が当該出願の命運を最終的に決定することになる。課題の記載方法、効果の記載方法は、相撲の「押し(忍し)」と同じであり、常日頃研鑚を重ねて置くべきであろう。権利化を目指す者は、どの様な事を記載すれば拒絶されないか、あるいはどの様な記載が抜ければ拒絶されるかの感覚を研ぎ澄ますことが出願に対する予防保全に通じる。代理人は、クライアントからプロとして信頼されることが大切である。代理人がプロとして信頼できない場合、クライアントは案件毎に内容チェックを厳格に行なう必要があり、非常に疲れる話となる。 |
| 【第24手】 |
良い明細書の記載方法 |
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「良い特許」が取れる様に【クレーム】を記載しなければならない。 |
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| (1) |
セールスポイントと特許技術の特徴を一致させること! |
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商品のセールスポイントとクレームの技術の特徴とを一致させて、セールストークによる営業活動と「良い特許」の機能の相乗効果により、更にライバル会社よりも優位に立ち事業を成功させることができよう。 |
| (2) |
嫌がられる/羨ましがられる発明 |
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平たく言えば、ライバル会社から嫌がられる/羨ましがられる発明が「良い発明」であり、めでたく特許発明となっても敵から「鴨葱特許」と言われては終わりである。 |
| (3) |
広い特許が取れる発明 |
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「良い特許」、すなわち「矛と盾の両方の効力」を発揮させるためには、広い保護と強い保護を受けられる特許とする必要がある。 |
| (4) |
強い特許が取れる発明 |
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強い特許とは、訴訟の際に強い特許のことであろう。 |
| (5) |
スキの無い特許が取れる発明 |
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広くて強い特許であってもスキが有っては駄目な特許であり、広過ぎる特許については、パテントマップ等を利用してスキの無い特許にする様に特に注意を払うべきである。
上記について、具体的には、SIMPLE IS BEST(多記載狭範囲の原則) 、水平展開・垂直展開、その他のクレーム表現(プロダクトバイプロセス、ファンクショナルクレーム、マーカッシュ形式、ジェプソンスタイル形式、立証し易い内容のクレームアップ、新規物質のクレームアップ、高金額の対象物のクレームアップ、特許明細書を見て後発メーカーは諦めてくれるクレーム、実施例等等については、残念ながら紙面の関係で割愛する。(詳細は、筆者の論説23)を参照のこと。) |
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| 【第25手】 |
上位概念の用語を用いること |
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実施例を中心とする幾つかの発明をした場合、それらの発明の隙間をも覆って保護してくれる上位概念を抽出することは非常に重要である。上位概念抽出法は、広い発明のためには非常に重要な改良発明法の一つである。例えば、空気、可燃性ガス、炭酸ガスの上位概念は気体であり、水、液化天然ガス、アルコールの上位概念は液体であり、そして気体、液体の上位概念は流体である。また、A、B、Cの共通機能Xを付して上位概念を“X材”とすることは、上位概念抽出法の一例である。例えば、金属箔、金属網等の上位概念として“導電材”が上位概念として抽出されるのである。また、自分で上位概念として自分で新しい名前を付けて、その上位概念の用語の定義を明細書の詳細な説明中で詳しく説明すると言う方法も有る。 |
| 【第26手】 |
【発明の詳細な説明】の記載方法 |
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| (1) |
【解決すべき技術課題】の記載方法 |
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技術課題の記載は、記載事項として義務付けられていないが、進歩性クリアのためには非常に重要である。望ましい課題の記載方法は、特徴的構成夫々に対応する各技術課題を、広い範囲から狭い範囲までを把握して確実に記載することが大切である。最後に特徴的構成夫々に対応する各効果を漏れ無く確実に把握して記載する。24) |
| (2) |
【課題を解決するための手段】の記載方法 |
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クレーム記載がシッカリなされているとすれば【課題を解決するための手段】の記載は、下記の様にクレーム記載事項をそのままコピーすれば良いであろう。
【請求項1】―――コピーしたクレーム記載事項―――
【請求項2】―――コピーしたクレーム記載事項―――
……
【請求項N】―――コピーしたクレーム記載事項――― |
| (3) |
【発明の効果】の記載方法 |
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課題が新規である場合、効果の程度のバーをクリアするのは、それ程苦労する必要は無い。ただし、特許調査等の裏付けにより課題が新規であることに自信が持てなければならない。課題が新規であれば、効果は異質の効果ということになるからである。異質の効果を記載する場合には、【解決すべき技術課題】が十分に記載されていれば、【発明の効果】の欄では、例えば「驚いたことに、各技術課題が十分に達成されると言う効果が有った。」と言う決り文句の如く記載すれば足りよう。25) |
|
| 【第27手】 |
出願から1年以内の出願見直しと国内優先権の活用 |
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出願から1年以内に出願を見直して国内優先権主張の手続をするかどうかを決めるべきである。26)出願をしても人間が行なう手続であるのでミスは付き物である。従って、国内優先権主張手続により実体的ミスにしろ書誌的ミスにしろ大抵のミスが治癒可能となるので1年以内に出願を見直すのは非常にメリットが有る。
なお、国内優先権手続の類型には、実施例補充型、上位概念抽出型、出願の単一性制度を利用する出願型の3つがある。27) |
| 【第28手】 |
早期審査と出願取下げの連続技 |
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早期審査とは、出願順審査の欠点を是正して早期権利化を図ることである。一般道路では無くて高速道路をスポーツカーでぶっ飛ばして目的地に到達する様なものである。
出願公開前28)に早期審査請求をして、特許となる場合には、当該出願を係属させれば良いが、特許となる見込みが無い場合には、出願公開前に出願を取下げて、良い特許が取得可能な新規な出願をするのである。これにより、更に1年6月、発明開示を遅らすこともできる。
ただし、気を付けなければならないのは、早期審査では実施発明を記載する必要が有るので、後に利用関係の侵害を構成する虞が有るので注意する必要があろう。所謂自己指定のPCT出願は国内移行後は無条件で早期審査されるので、この様なことを心配する必要が無い。 |
| 【第29手】 |
ノウハウは出願しないこと |
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一旦公開されてしまうとノウハウの経済的価値は全く無くなる。従って、ノウハウは出願すべきではない。出願に記載のノウハウは、出願公開後は経済的価値を失うからである。ここに、商品となる物の発明はノウハウではない。発売化されれば商品を入手して誰でも煮るなり焼くなりすることができるからである。一方、製造方法の発明は一般にノウハウと考えられよう。製造方法の発明自体は第三者の目に触れることが少なく、一旦第三者の目に触れることになれば、最早ノウハウとしての価値を無くすからである。ノウハウを出願する等は愚の骨頂であろう。単にライバル会社に自社技術を只で教えてやる様なものである。 |
| 【第30手】 |
特別な理由が無い場合には特許出願とすべき
−実用新案登録出願とすべきでない− |
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現在では実用新案登録出願の存在価値が非常に低下してきて殆ど存在価値が無い。商品寿命が短い、即権利化が必要である等の特別な理由が無い場合は実用新案登録出願とすべきでは無く、特許出願とすべきであろう。29)権利行使についても、肯定的技術評価書を必要とするので、権利行使はなかなか難しいのである。また、ライセンス許諾についても、実施料を支払う相手側から実施料支払いの条件に肯定的技術評価書を取ることとされた場合は、ライセンス許諾にも支障が出てくる。 |
| 【第31手】 |
安易な減縮補正は信用失墜の基因 |
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一般には、補正は、意見書と並んで拒絶対応の双璧と考えらる。しかし、安易な減縮補正は、進歩性クリアの足しにもならず、単に権利内容を減縮しただけに留まり、最終的にはクライアントの信用失墜を招来することになりかねない。クライアントに権利を一部放棄させると言う両刃の剣の意味も有り多用することは危険である。拒絶理由通知が来ると先ず数値限定を行なう代理人をよく見かけるが、数値の臨界的意義がハッキリしない場合には、進歩性をクリアするための足しにもならず、単にクレームを減縮しただけで、クライアントの信用失墜を招くだけの結果となりマズイのである。マズイ意見書は、幾らマズくても拒絶されるだけで済むが、マズイ補正書は回復できない権利放棄となるので要注意である。拒絶査定となれば未だ争い得るが減縮補正した内容で特許となれば一旦放棄した部分は回復できないからである。従って、意見書と補正書は、先ず意見書、その次に補正書の順で検討するのが良いであろう。
減縮補正が頭を過ぎった場合は、減縮補正は“悪魔の囁き”でもあるから、慎重に検討してかつクライアントの利益を害さないことをくれぐれも駄目押し確認をする必要があろう。上記は、代理人について述べたが、特許担当についても同じことが言える。 |
| 【第32手】 |
面接を大いに活用すること |
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面接を積極的に活用して、その時に特許性有りと判断された内容を簡単に纏める様にする。特に意見書、補正書を作成する前に、事前に面接を行なうのが有効であろう。面接を活用すれば自然と「簡にして要」の意見書作成は達成されよう。特許庁にとっては、早期審査が図れるし、出願人にとっては、納得いく早期権利化が可能となり、特許庁と出願人双方にとって非常にメリットがある。補正案さえ有れば、各補正後の特許性についての特許性のポイントを説明するだけで良いであろう。面接の際には、模型、現物等視覚に訴えて説明することが得策となる。 |
| 【第33手】 |
出願分割
−特許取得の確率アップ手法− |
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分割は非常に戦略に富んだ対応策で、相撲の技で言えば出し投げに相当しよう。出し投げで決まればそれで良し、例え決まらなくても自分の態勢が崩れないから次々と連続技を仕掛ければ良いのである。
相撲の技の中でも最も印象的な技は、小兵の舞の海が八艘飛びで相手を飛び越して相手の後ろに廻って送り出して相手を倒したことであろう。この場合単に八艘飛びのみで相手が簡単にコケてしまう場合も有る。出願分割しただけで原出願の拒絶理由も通知されることも無く特許査定となる場合も有り得る。全く「ラッキー。ラッキー。」と言う他は無いのであるが……。
補正は時期により補正の制限が厳しくなり窮屈な対応となるのに対して、分割の場合は、内容的には補正の場合より対応が広いと言うことが根底に有る。当初出願明細書に記載されていた事項の範囲内であれば、クレーム化して権利化を図ることができるからである。
さて、何も実体的手続をしないで特許を取得することとなり得る場合が有ることを説明しよう。ここに、p:出願審査において特許となる確率 q:出願審査において拒絶査定となる確率(=1−p) としよう。
最初の出願が拒絶査定となる確率はqであり、拒絶査定後の第1回分割出願について拒絶査定となる確率はq**2となり、次々と分割出願をN−1回する場合、最終の分割出願が拒絶査定となる確率はq**Nとなり、分割出願をする度に特許となる蓋然性が高くなる。
例えば、出願審査において拒絶査定となる確率がq=0.6の場合、分割出願を2回(N=3)すれば、拒絶査定となる確率は0.6**3=0.216となって、「分割出願を2回すれば、先ずは特許になるでしょうね。」と言うことになる。
上記については、原出願と分割出願とが独立であることを前提としているが、審査官は原出願の拒絶理由を考慮するであろうから上記の様に簡単には話は行かないが、分割出願をすれば、特許となる確率が高くなると言うことは間違いないであろう。 |
| 【第34手】 |
ワザと拒絶される請求項 |
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ワザト100%拒絶される請求項を入れて置くこと。拒絶理由通知も無しに(何らの拒絶対応のチャンスも与えられずに)、イキナリ特許となった場合、今回の附与後異議申立制度下では、最早分割をすることもできず、取消し理由通知の対応が窮屈となるので対応は窮屈かつプレッシャーの掛かるものとなる。30)改正前の附与前異議申立制度下では、分割が認められていたのに対して、附与後異議申立制度下では、何らの拒絶理由通知を経ずイキナリ特許となるのでその時は「ラッキー。ラッキー。」と思っても後に「シマッタ。」と思う場合が往々にして有るのである。この様なことを回避しようとすれば、予めわざと100%拒絶される請求項を入れて置くことが考えられる。拒絶理由通知等を受けた時点で、補正、分割等の拒絶対応をするチャンスを確実に得るからである。 |
| 【第35手】 |
出願変更 |
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実用新案制度が前面改正された関係で、戦略としての出願変更は、意匠→特許、特許→意匠→特許等の出願変更であろう。殆どの特許出願の対応は分割出願で間に合うであろうから、変更出願は変則の技であろう。感覚的には車線変更の様な感覚であろう。分割出願と異なって原出願は取下げられて、新出願は、別の工業所有権法で保護される。
分割出願より変更出願の方が良い点は、まさか意匠に出願変更して更に特許出願に出願変更してくるとはライバル会社も考えない点であろう。31) |
| 【第36手】 |
補正
−拡大補正− |
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提示された拒絶引例を楽々クリアできる場合、「拡張補正しても十分特許になります。むしろ逆に拡張補正することをお勧めします。」と言った方が、広い特許が取れるので開発の人間あるいはクライアントからは信頼されよう。
ここに、拡張補正とは、@構成要件を減縮して“SIMPLE IS BEST”を更に追求することA構成要件を増加した請求項を新たに追加すること等である。Aの拡張補正は、保険を掛ける点でも非常に有効であるから、もっともっと活用するのが良いであろう。 |
| 【第37手】 |
補正
−詳細な説明の補正− |
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| (1) |
課題の補正 |
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引用文献記載の課題が共通すると言う拒絶理由が拒絶理由の半分以上を占めている。すなわち、課題が共通すると言う拒絶理由に対する拒絶対応が最も確率的に多く重要である。32)従って本特許出願と引用文献の明細書を比較した上で、本発明の出願明細書の課題を補正して、引用文献発明と課題を共通としない様にするのが最も手っ取り早い拒絶対応であろう。課題が相違するならば、その課題に対応する構成要件の相違点が有り、その構成要件の相違点に基く異質の効果が有ると言う具合に順を追って説明すれば、拒絶理由は解消することになる。 |
| (2) |
効果の補正 |
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引用文献記載の課題が共通する場合であっても、それだけで必ず拒絶とはならない。例え課題が共通する場合であっても、種々の試行錯誤の結果予想外の効果を発揮する様な発明も有るからである。かかる発明の場合、効果の補正により拒絶理由解消となり得る。引用文献と比較して構成の相違に基いて顕著な効果を奏する様に効果を補正する。明細書の詳細な説明中、例えば、効果に関して記載された個所を虱潰しに探してその該当個所を【発明の効果】の欄に集めてきて補正をするのである。 |
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| 【第38手】 |
補正書と意見書のコンビネーションブロー |
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| (1) |
補正書が主の場合 |
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プロである審査官等が、補正書だけ見れば進歩性がクリアされることが直感的に判る様な場合には
クドクドと意見書を書く必要は無い。 |
| (2) |
補正書が従の場合 |
|
補正書だけで、十分拒絶対応できない場合は、意見書を書く必要が有る。注意すべきは、これこれこのように記載したいという意見書の内容が先ず最初に有って、次にその内容に合わせた補正書を作成して拒絶対応可能な様に意見書を作成することが重要である。補正をすれば認定事実が異なってくるから、当然判断結果は異なってくる。補正は、不適法補正でないギリギリの範囲の補正を行なうのであるが、補正が適法補正であることについて絶対の自信がなければならない。事実認定で躓けば、それに基く判断も誤ったものになり結局は負けることに繋がるからである。補正によって認定される事実から特許性有りとする結論が得られる様に補正書と意見書のコンビネーションによって拒絶回避を試みるのである。
うまいワンツーパンチが決まれば、最大の効果を発揮することが可能である。また、逆に言えば、補正書と意見書の個々はそれ程労力を掛けなくても、コンビネーションブローで最大の効果を与える場合が有ることを知って置くと役に立つであろう。 |
|
| 【第39手】 |
比較データの提出 |
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補正として実施例のデータを補充することは、現法制下では不適法補正であり認められない。ただし、補正する代わりに、比較データを提出して意見書の中で比較データにより実施例と比較例から特有の優れた効果を実証することは可能である。比較データの非線形性から数値の臨界的意義を証明して、本発明は公知発明から当業者想到困難であることを主張するのである。比較データで証明することは明細書の詳細な説明等の何処かに記載されている効果を明確にする意義があろう。 |
| 【第40手】 |
無効審判請求は一発逆転技 |
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特許無効審判は、利害関係人である異議申立人から見て本当に不利となるのであれば、自主的には先ず請求をしないであろう。自主的に特許無効審判を請求する場合と言うのは、それ程大したことのない、すなわち負けてもそれ程の痛手とならない場合/あるいは特許無効にするのに余程の自信が有る場合のどちらかであろう。特許無効審判で特許無効になる確率は大体10〜20%程度であるので、負け戦は誰も嫌であろうし、寝た子をワザワザ起こすことも無いという意見も有力となる。訴えられて止むを得ず無効審判を請求するのは自然である。相撲で言えば攻め込まれて捨て身の“うっちゃり”とか“播磨投げ”とかが特許無効審判に相当しよう。33) |
| 【第41手】 |
“でも”よりは“しか”
―中途半端に二兎を負うな― |
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情報提供、異議申立、無効審判で、相手特許を潰すための理由が2以上ある場合、どの理由が一番有力であるかを見定め、その理由の欠陥を補強して相手特許を潰す確率を高める方が、中途半端に二兎を追うよりもベターである。“これでも”行けるかも知れないより、最善の拒絶理由に焦点を絞って“これしか”無いと考えて攻撃する方が、注ぎ込む労力が同じであれば後者の方が勝率は高いであろう。34) |
| 【第42手】 |
一人で複数の情報提供、異議申立をする |
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自分で複数の情報提供をすることも手続戦略としては有り得る。 例えば、拒絶理由が2つ以上有って独立して情報提供した方がコンパクトかつパンチの効いた情報提供をすることができる場合が有る。そして、審査官は複数の情報提供が有った場合、その出願が注目されていることを認識することになり、慎重に審査すると言う反射的効果も有るであろう。すなわち、複数の情報提供が有れば、その案件が経済的にも重要な出願であって安易な審査はできないと直感させる効果が有る。戦場において自陣の旗の数を増やして大軍が陣取っている様に見せかけて密かに本隊は移動させて敵の背後を突くと言う戦法にも似ている。 |
| 【第43手】 |
第三者が審査請求をすると言うこと |
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自分の出願を自分が審査請求をすることは当り前のことであるが、第三者も審査請求をすることができる(特許法第48条の3第1項)。第三者が審査請求する場合とは、一般的には出願がこのまま特許されれば実施予定技術が侵害となる虞が有る場合に早期に白黒を付けようという場合である。拒絶査定の確定、減縮補正により侵害を回避できるからである。
ただし、第三者の審査請求は、出願人は、喧嘩を売られた様なもので、闘争本能に火が付き全力を出して対応することとなり、審査請求した第三者は、出願人の非常に手強い対応を覚悟しなければならない。
従って、権利化防止に自信が有る場合、負けたとしても何らかの策が有る場合等には、第三者が審査請求をすることも有り得よう。第三者はできるだけ早く安心を得ようとするのだからできるだけ早く審査請求をする方が、メリットは大きいであろう。 |
| 【第44手】 |
特許性は“かつかつであっても確実”にクリアすること |
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一定の特許要件をクリアすれば特許となるのであり、楽々クリアしたからといって、それだけで企業にとって「良い特許」と言うこともできない。
従って、特許性すなわち進歩性を“かつかつであっても確実”にクリアすれば充分でありそれ以上に技術レベルが高くても「良い特許」とは関係ない。権利化を目指す者にとって、この進歩性を“かつかつであっても確実”にクリアするテクニックは必ず身に付けて置く必要があろう。例えば、ハイジャンプで常にバーを引掛けてもバーを落とさないと言う技はプロの技である。宮本武蔵の“見切り”にも通じよう。
特許性をクリアした上で「良い特許」になるためには経済性・権利性が必要とされるのである。従って、特許性が”かつかつであっても確実”に取得した特許は、「良い特許」に繋がろう。 |
| 【第45手】 |
特許を潰すための調査方法 |
|
ここでは、特許(出願を含む。)発明Cを進歩性(特許法第29条第2項)違反の理由で拒絶するための先行文献の調査方法を述べることにしよう。
特許を潰すためには、ある基本発明(公知発明A)の構成要件 aを公知発明Bの構成要件bで置換して、特許発明Cとすることが当業者想到容易であることが必要である。 |
|
| <第1段階> |
基本発明Aを記載した先行文献X |
|
基本発明Aを探すための発明の属する分野は、特許発明Cの属する分野と同じである必要があろう。35)特許発明Cの属する分野に習熟した研究者は、上述により特定された発明Aは、一般にはポピュラーであり、発明Aを記載した先行文献Xを見つけることは、それ程困難ではない。 |
| <第2段階> |
特許発明Cの特徴的構成要件bからなる発明Bを記載した先行文献Y |
|
続いて、特許発明Cの特徴的構成要件bからなる発明Bを記載した先行文献Yを見つけることが重要である。
このようにして、見つけた発明Aを記載した先行文献Xと特許発明Cの特徴的構成要件bからなる発明Bを記載した先行文献Yが漸く見つかることになる。
後は、進歩性判断に手慣れた特許の人間が、基本発明Aの構成要件aで置換して、特許発明Cとすることが当業者容易想到であることを充分確認して置く必要があろう。
このようにして、特許を潰すための先行文献調査は終了するのである。具体的に、特許を潰すための手段は、情報提供、附与後異議申立、無効審判であろうが、そのための書類作成は、信頼できる代理人等に任せて置けば良いであろう。
特許調査の世界では、「特許を潰すことは先行文献が九であり、異議理由を書く者の腕は一だ。」と言えよう。先行文献の良し悪しで9割方は勝負が決ってしまう。36) |
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| 【第46手】 |
特許調査の数学 |
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特許調査の検索件数(ヒット数ともいう。)が膨大となれば文献を読むことが不可能となり実際的ではない。 そこで、検索式による検索件数が何件であるかが即座に予測できれば、何件の抄録を読めば良いか予め分かるから便利である。
特許調査の数学は「検索式で表現される検索件数は何件か?」と言うことである。検索すべき集合をA、Bとし、集合A、Bの検索件数をN(A)、N(B)とする。
“AまたはB”の検索件数はN(A+B)となり、“AかつB”の検索件数はN(A*B)となり、以下の式で計算することができる。
N(A+B)=N(A)+N(B)……………(1)
N(A*B)=N(A)*N(B)/N0……(2)
ここに、N0は、日本の全特許件数(約550万件)であり、集合Aと集合Bは独立と考えることにする。
(1)式と(2)式を組合せれば複雑な任意の検索式でも検索件数を求めることができる。
従って、集合A、Bの検索件数N(A)、N(B)が予め分かっている場合、複雑な検索式の検索件数が手計算で簡単に分かるので、効率的な特許情報検索が可能となろう。 |