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◆メチルナフタリンの製造方法(書誌+要約+請求の範囲)
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開平5-97721
(43)【公開日】平成5年(1993)4月20日
(54)【発明の名称】メチルナフタリンの製造方法
(51)【国際特許分類第5版】
C07C 15/24 8619-4H
7/04
7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願平3-253734
(22)【出願日】平成3年(1991)10月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号
(72)【発明者】
【氏名】遊津 敏
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】須田 康裕
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】永野 典郎
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 富徳
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(74)【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】三枝 英二 (外4名)
(57)【要約】
【構成】本発明は、コールタールの分留により得られるメチルナフタリン含有油を蒸留して沸点220~250℃の留分を得、次いでこれを酸抽出することを特徴とするメチルナフタリン含有油から精製メチルナフタリンを製造する方法を提供する。
【効果】本発明方法によれば、簡便な操作で高収率、高純度で目的とする精製メチルナフタリンを分離することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】コールタールの分留により得られるメチルナフタリン含有油を蒸留して沸点220~250℃の留分を得、次いでこれを酸抽出することを特徴とするメチルナフタリン含有油からメチルナフタリンを分離精製するメチルナフタリンの製造方法。
詳細な説明
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はコールタールの分留により得られるメチルナフタリン含有油からメチルナフタリンを分離精製する方法に関する。
【0002】
【従来技術とその課題】メチルナフタリンは、溶剤、染色キャリアー、ビタミン、高性能樹脂等の原料等として、各種業界で有用なものであり、その製造法の重要なひとつとしてコールタールの分留による方法が知られている。しかるに、コールタールの分留により得られるメチルナフタリン含有油には、メチルナフタリンと沸点の近接するキノリン、イソキノリン等の塩基性含窒素化合物が含有されており、之等を除去すると共に、更に含有されるビフェニル、ジメチルナフタリン類、アセナフテン、ジベンゾフラン等を除去しなければ、高純度のメチルナフタリンを得ることはできない。
【0003】上記塩基性含窒素化合物の除去手段としては、従来より、コールタール分留留分に酸を反応させて上記塩基性含窒素化合物を水溶性塩として除去し、そしてその後分留して分離精製されたメチルナフタリンを得る方法が知られている。しかしながら、この方法では、酸を反応させる場合にタール状のスラッジが多量に発生し、これが操業性を低下させ、目的とするメチルナフタリンの回収率を低下させると共に、廃棄物処理の問題をも伴うという欠点がある。更にメチルナフタリンを分離精製する方法としては、メチルナフタリン含有油に共沸剤としてポリアルキレングリコール類を混合して共沸蒸留を行なう方法も知られている(特公昭63-6531号公報参照)が、この方法では多量の共沸剤を用いねばならない不利があると共に、共沸剤が分離精製したメチルナフタリン内に混入するため、この共沸剤を上記メチルナフタリンから分離して回収する工程が必要となる欠点がある。
【0004】本発明者らは、上記従来技術の欠点を解消して高純度のメチルナフタリンを効率よく分離精製する手段を開発することを目的として鋭意研究を重ねた結果、メチルナフタリン含有油を予め蒸留した後、酸抽出を行なう時には、該酸抽出の際にスラッジの発生を伴うことなく、塩基性含窒素化合物がみごとに除去できるという事実を発見し、先にこの知見に基づく発明を完成し、特許出願した[特願平3-248900号]。
【0005】該発明は、コールタールの分留により得られるメチルナフタリン含有油を蒸留して沸点200~290℃の留分を得、次いでこれを酸抽出してキノリン、イソキノリン等を除去して準精製メチルナフタリンを得、更にこの準精製メチルナフタリンからナフタリン等を分留して除去する方法であったが、この方法ではメチルナフタリン含有油から蒸留、酸処理、蒸留という3工程を要するため、製造プロセスが複雑となり、設備コスト、製造コスト等のコストが高くなり、熱効率も若干悪いという欠点があった。
【0006】本発明者らは引き続く研究の結果、上記発明の欠点をも解消し得る新しい方法を見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明によれば、コールタールの分留により得られるメチルナフタリン含有油を蒸留して沸点220~250℃の留分を得、次いでこれを酸抽出することを特徴とするメチルナフタリン含有油からメチルナフタリンを分離精製するメチルナフタリンの製造方法に係わる。
【0008】本発明方法によれば、上記の通りメチルナフタリン含有油を予め220~250℃で蒸留してナフタリン等(ナフタリン等の軽量分及びインドール、ビフェニル、ジメチルナフタリン類、アセナフテン、ジベンゾフラン等の重量分)を分留除去した後、酸抽出を行なうことに基づいて、メチルナフタリン含有油を直接酸抽出する従来法にみられるスラッジの発生を伴うことなく、キノリン、イソキノリン等の塩基性含窒素化合物を除去でき、従ってスラッジ処理の必要もなく、またスラッジによる目的物の回収率低下もなく、非常に高収率、高純度でしかも簡単な操作で熱効率よく目的とするメチルナフタリンを分離することができる。本発明方法によって、かかる優れた効果が奏し得る理由は尚明らかではないが、酸抽出の際のスラッジの発生は、メチルナフタリン含有油中に存在するインドール等のオレフィン類が酸を触媒として重合することによると考えられ、本発明によれば、このスラッジ発生要因となるオレフィン類等が蒸留除去できるためと考えられる。いずれにせよ、本発明方法によれば、コールタールの分留油よりメチルナフタリンを高収率、高純度で分離でき、しかもこの方法では高価な共沸剤等を利用する必要もない。従って本発明方法は工業的実施に適したものである。
【0009】殊に本発明方法における蒸留工程は、本発明者らの先の出願に係わる発明の蒸留工程とは異なって、引き続く酸抽出時のスラッジ発生を防止するだけでなく、ナフタリン等の除去をも合わせて行なうものであり、これによれば、本発明方法の設備コスト、製造コスト等を低減できると共に、該方法における熱効率を向上できる利点がある。
【0010】尚、従来の酸抽出技術、即ちメチルナフタリン含有油を酸処理後、蒸留する技術では、酸抽出によって除去できるキノリン、イソキノリン等を中和して副生物として回収することができるため、蒸留工程は酸抽出後に行なうことが常識化されており、この方法ではスラッジ発生は避けられないものであった。これに対して本発明方法は、メチルナフタリンの精製に着目してなされたものであり、特に設備コスト、製造コスト、熱効率等を考慮すれば、キノリン等の回収が副目的となる場合に非常に有効な方法である。
【0011】本発明方法において、被処理原料とするコールタールの分留により得られるメチルナフタリン含有油としては、通常の分留操作により得られる各種のものをいずれも利用できる。その代表例としては、約200~300℃の留分を例示できる。該代表的メチルナフタリン含有油の組成[ガスクロマトグラフ法による]は、下記表1に示す通りである。
【0012】
【表1】
【0013】本発明方法においては、上記メチルナフタリン含有油をまず蒸留して、沸点220~250℃の留分を得る。この蒸留操作はよく知られている一般的方法に従い、通常の蒸留装置、例えば多段蒸留塔等を用いて、常圧乃至減圧下に行なうことができ、特に精留する必要はない。斯くして得られる留分の代表的組成は、上記と同一測定法による測定の結果、下記表2に示す通りである。
【0014】
【表2】
【0015】次いで本発明方法においては、上記で得られる留分を酸抽出する。この酸抽出操作は、従来行なわれている操作と実質的に異なる訳ではなく、一般には硫酸、塩酸等の無機酸類を用いて行なうことができる。該酸は濃酸でも希酸でもよく、その被処理留分に対する使用割合も特に限定はない。
【0016】上記酸抽出により、所望の精製メチルナフタリンを収得できる。
【0017】
【実施例】以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。
【0018】
【実施例1】前記表1に記載の組成を有するコールタールの分留によるメチルナフタリン含有留分(以下「%」とあるはこの原料であるメチルナフタリン含有留分を100%とし、これに対する重量%を意味するものとする)を、理論段数50段の蒸留塔を用いて還流比5(50mmHg)で蒸留を行ない、128℃から流出温度145℃(常圧に換算すると、220℃から流出温度250℃に相当)までの留分を得た。その組成は前記表2に示す通りである。
【0019】上記で得られた蒸留留分(53%)を、30%硫酸と容量比3:2で混合し、40℃で2時間攪拌後、静置分離を行なった。この時の界面の分離状態は良好であり、スラッジの発生は実質的に認められなかった。
【0020】上記により、目的とする精製メチルナフタリン(45%)を得た。
【0021】かくして得られた精製メチルナフタリンの回収率は84%であった。またこのもの前記測定法に従う組成は、表3に示す通りであり、塩基性含窒素化合物は完全に除去されており、また酸抽出によるメチルナフタリンのロスは実質的に認められなかった。
【0022】
【実施例2】実施例1と同様にして蒸留を行なって得られた留分を、60%硫酸と容量比2:1で混合し、10分間攪拌後、静置分離を行なった。この時の界面の分離状態は良好であり、スラッジの発生は実質的に認められなかった。即ち、硫酸濃度が高いと一般にはスラッジの発生の可能性が高くなるが、本発明方法では高濃度の酸に対しても、スラッジの発生がないことが確認された。
【0023】かくして、目的の精製メチルナフタリンを得た。このものは塩基性含窒素化合物が完全に除去されており、また酸抽出によるメチルナフタリンのロスは実質的に認められなかった。
【0024】
【比較例1】前記表1に記載のメチルナフタリン含有留分を、40%硫酸と容量比100:45で混合し、40℃で2時間攪拌後、静置分離を行なった。この時、界面付近には多量のスラッジ(10%)の発生が認められた。次いで油層(85%)を理論段数50段の蒸留塔を用いて還流比5:1(50mmHg)で蒸留を行ない、125℃から流出温度140℃でナフタリン等(7%)を除去し、更に140℃から流出温度145℃でビフェニル、ジメチルナフタリン類、アセナフテン、ジベンゾフラン等を除去して、精製メチルナフタリン(42%)を得た。このものの組成を同様にして測定した結果は表3に示す通りであり、メチルナフタリンの回収率は76%に止まった。
【0025】
【表3】
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